5次元宇宙とは、4次元である(縦+横+高さ+時間)に5番目の次元方向への距離を足したのが5次元である。

 その5次元宇宙には、4次元世界が折り重なるように多層的に存在し、その間を重力子を通して情報のやり取りをしているというのである。

 私たちは、3次元という「膜(まく)」に存在しているが、例えていえばスライスしたチーズの一つが私たちの住む3次元世界で、他のチーズ、すなわち他の3次元世界が存在する可能性があるとリサ・ランドール博士は推測する。

 それは宇宙には我々の住んでいる3次元世界のような空間が幾重にも存在し、その間を5次元空間が埋めている。5次元空間には3次元世界が詰まっているというのである。

 その3次元空間の間を行き来できるのが重力の力で、重力の微小な揺らぎを調べることで5次元空間の様子を理解することができる。

 また、素粒子実験で、衝突後に素粒子が消えることがあるが、それは5次元空間へ行ってしまったと考えられる、とランドール博士は解説する。

 万物の奥に隠れていてあらわれない、3次元世界が詰まったすべての根源をなす5次元。いくつもの3次元世界が折り重なるように多層的に存在するというランドール博士の世界観。

 密教の「密」には2つの意味がある。

 一つは隠れているもの、あらわれていないものを指し、「密」は万物の奥に隠れている、という意。

 もう一つは、膨大な要素、存在する様々なもの、森羅万象の真諦が詰まり、それらはすべての根源をなす、という意。

 1200年前に「汙字観」で空海が表現した密教の宇宙観と、現代の気鋭の理論物理学者リサ・ランドール博士の宇宙観は、時空を超えて整合しているかのように私には映る。

 私たちが、生きるこの世界を、空海は以下のように詠んでいる。

「生縁聚(しょうえんあつ)まるときは則(すなわ)ち春苑(しゅんえん)の華(はな)も其(そ)の咲(え)めるに譬(たと)うるに足らず」『遍照発揮性霊集』

 いくつもの宇宙の中にあって、縁あって、いま、この世界に存在する、この悦びは爛漫と咲き誇る春の花々の中にいるようなものである。

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