(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)
もっと早く着手すべきだった医療現場支援
安倍首相は全国に緊急事態宣言を発出する4月17日の記者会見で次のように語った。
「医療現場からは悲鳴が上がっています。守れる命も守れなくなる。感染リスクと背中合わせの中で、現場の医師や看護師の皆さんの肉体的な、精神的な負担は限界に達しています」「国として自治体と連携し、感染予防に必要な医療防護具を1つでも多く現場にお届けします。医療用ガウンや高機能マスクなどを、産業界の全面的な協力を得て、調達いたします」
危機的状況の医療現場に防護服やマスクを緊急調達するとのことだが、遅すぎると言わざるを得ない。
前日の4月16日に、全国医師ユニオンが厚労大臣宛に緊急要望を出した。その内容はPCR検査数の大幅な増加やその実施数と陽性者数などのリアルタイムでの情報公開。また医療従事者への優先的な抗体検査。サージカルマスク等の感染防護具の地域別の必要数の把握や医療機関への優先的な供給システムの確立などである。
この記者会見を行った際、ユニオンの代表は、「安倍首相は医療現場を守るため、あらゆる手を尽くすと述べたが、とてもあらゆる手を尽くしているとは思えない」と批判していた。当然だ。
そもそも新型コロナウイルスが世界で蔓延し始めたとき、いずれ日本でも感染が拡大することは容易に予測できたことである。医療用ガウンや高機能マスクなどがほとんど海外で作られ、日本はそれを輸入していたことなど、厚労省は分かっていたはずだ。もっと早く産業界に要望して生産に着手しておくべきだった。