新型コロナウイルスの感染が広がる前のニューヨークメトロ(写真:AP/アフロ)

ニューヨークの惨劇

 世界中で感染拡大が進んでいる新型コロナウイルス。当初は中国の問題と捉えられていたが、グローバル化の進展もあり、あっという間に世界中に広がった。その中でも、新型コロナウイルスの直撃を受けているのが米国だ。

 3月13日にトランプ政権は国家非常事態を宣言。その後、カリフォルニア州やニューヨーク州などが不必要な外出を禁じる外出制限措置に踏み切ったが、米国の感染者数と死亡者数はイタリアを抜き、世界最悪の状況だ。

 既に感染者数は63万人超と、世界全体の感染者数の30%を占める(4月16日時点、ジョンズ・ホプキンズ大学のデータ)。死亡者も2万人8000と最も多く、新型コロナウイルスの猛威にさらされている(中国が公表数字を過少申告している疑惑についてはここでは触れない)。

 そんな米国の中で、最も被害が深刻なのがニューヨーク市とその周辺だ。ニューヨーク・タイムズの記事を見ても分かるように、感染者数、死者数ともにニューヨークが断トツに多い。今後、ニューヨークから各地に感染が広がることが懸念される。

 中国の追撃を受けているとはいうものの、米国は名目国内総生産(GDP)が世界一の経済大国であり、ニューヨークは世界で最も繁栄している都市だ。しかも、米国には感染症対策で世界最強とささやかれる米疾病対策センター(CDC)があり、そもそもの医療レベルは高い。それなのに、なぜここまで被害が拡大してしまったのか。

人との距離が近いニューヨーカー

 まず考えられるのは、ニューヨーク市の人口密度だ。ニューヨーク市は人口800万人を超える巨大都市だが、その広さは、マンハッタン島を中心にした5つの行政区で800平方キロメートル(陸地面積)近くと東京23区より少し広い程度。2010年の国勢調査によれば、人口密度は1平方マイル(2.59平方キロメートル)あたり2万7000人と、シカゴの2倍、ロサンゼルスの3倍に達する。

 実際、朝晩の地下鉄は混み合っており、人気のレストランやバーに行けば、隣の客と肘がぶつかるような混み具合だ。家賃は高く、一つの部屋を複数の人間でシェアしている人もかなりいる。感染者数が増加したのはPCR検査を拡大した影響だが、そもそも感染爆発が起きやすい環境にあったのは間違いない。

 また、ニューヨーカーのカルチャーや慣習面も感染爆発の要因と考えられる。