新型コロナウイルスの感染拡大で医療崩壊の危機にある米国では、経済活動へのダメージも計り知れない

「すでに充分に不況と捉えられるし、こんな状況はいまだかつてなかった」

 プリンストン大学のアラン・ブラインダー教授の言葉を待つまでもなく、新型コロナウイルスによる経済的打撃は日米だけでなく世界中で深刻さを増している。

 特に感染者・死亡者の人数で世界最悪を更新している米国では、3月中旬からの3週間で約1700万人が新規の失業保険を申請しており、米国という巨船は沈みはじめたかに見える。

 米JPモルガン・チェースは第2四半期の米失業率は20%に達すると推測しているし、エコノミストによっては2021年になっても9%前後で高止まりすると見る向きもある。

 筆者は失業率の動きよりも、失業者の実数を計った方が経済全般のナマの姿を読み取れると考えている。

 過去の不況を眺めると、例えば2008年からのリーマンショックに端を発する世界金融危機でさえ、米国の失業者は1500万人超だった。

 今回は1700万人超であり、この数字は今後さらに増えると思われる。今回の不況がいかに深刻であるかが分かる。

 ドナルド・トランプ大統領は先週、全米で発令されているロックダウン(都市封鎖)が解除された後は、「米経済は(スピードの出る)宇宙船のように上向く」と豪語したが、V字回復する保証はない。

 楽観的な見方はトランプ氏らしいが、新型コロナの感染者・死亡者がある時期から急に霧消することは考えにくく、各分野で慎重な対応が望まれる。