貧困層はサービス業に従事している割合が高く、仕事に行くため、地下鉄やバスなど公共交通機関を利用せざるを得ない。一方、白人層やアジア系はホワイトカラーが多く、感染の危険を冒して公共交通機関に乗る必要がない。
また、貧困層は食生活が偏っている場合が多く、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を抱えている人も少なくない。今回の新型コロナは基礎疾患の有無によって致死率が変わると言われている。これから検証が進むだろうが、感染拡大に貧困と格差が関わっている可能性は高い。
もちろん、トランプ政権の迷走もある。
感染は1月から広がり始めていたが、トランプ大統領は「完全に管理下にある」と新型コロナの脅威を過小評価。感染の拡大を把握するのが遅れた。その後、国家非常事態宣言を出し、不要不急の外出の自粛を要請したが、11月の大統領選を念頭に、外出自粛の早期緩和を望んでいるのは周知の通り。国家安全保障会議(NSC)内で感染症を担当する部局を廃止したことも、即応能力の低下につながったと指摘されている。
これまで述べたように、高い人口密度と人の距離が近いという社会的な要因、そして移動せざるを得ない人々の存在と政権のコロナ軽視が重なって、感染者数の爆発と医療崩壊が起きたと考えていいだろう。
ニューヨーク州のクオモ知事は13日の会見で、州内における死者数の伸びが鈍化したと述べ、「ピークは過ぎた」という認識を示した。ただ、ワクチンが開発されたわけではなく、油断すればすぐに第二波が押し寄せる。それを防ぐためには、ソーシャルディスタンスを守る、発熱や咳が出た程度では病院に行かないなど、これまでの対策を墨守する必要がある。それが、ニューヨークが身をもって教えてくれた教訓である。