現場に裁量はあるか

 2019年5月5日の日本経済新聞に、北川悦吏子さんのインタビュー記事が掲載されていた。

 北川さんはNHK朝ドラ『半分青い』の脚本を担当し、大企業を辞めて一人で製造業を興す人物を描いた。実際にそうした一人メーカーの人たちを取材してみると、大組織でたくさんのハンコを待つ日々の中、一向に自分のアイディアを形にできないことに苛立ち、会社を飛び出した人たちが多かったという。

 他方、北川さんは若い頃、まだ新人だったにも関わらず看板枠のドラマを任されたことがあった。それだけの度量が上の人にあったし、それができる裁量権が、ドラマ制作の現場に与えられていたからだ。

 小泉旋風以降、日本では「リーダーシップ」と「トップダウン型」が大流行した結果、リーダーの許可なしに動けない現場が増えてしまった。つまり、現場から裁量が奪われてしまった。リーダーシップが逆にハンコ主義をひどくさせ、組織を停滞させてしまった。日本からイノベーションが起きなくなったのは、トップダウン型のせいといえるのではないか。

イノベーションを起こす組織の在り方とは

 トップダウン型は誰も責任をとらなくなる。誰も自分ごととしてとらえられなくなる。現場に裁量もなくなり、イノベーションの起きる素地が失われる。

 トップダウン型が格好よく思えたのは、論理がわかりやすかっただけで、人間心理や社会の実情にまったく配慮していない、机上の空論だった恐れがある。

 ボトムアップ型でアイディアを募る。リーダーは責任を負う。部下は自分のアイディアを実現しようと力を尽くし、必要とあればアイディアの修正もいとわない。同僚はリーダーと仲間を支援する。リーダーは、頑張る部下のために責任を負う、という使命感を帯びる。イノベーションが生まれる環境には、こうしたエンゲージメントの好循環が必要なのではないか。

 イノベーションを起こすには、組織のあり方はどうあるべきか。いま一度、見直すべき時期が来ているのかもしれない。