組織の一体感を高めるエンゲージメント

 ボトムアップ型で、かつリーダーが責任も持つ体制であればリーダーは「部下に責任をとらせてなるものか」と責任感が強まる。「俺があいつを守ってやるんだ」という、一種の使命感を覚えることができるから、そうした心理に至りやすい。アイディアを出した部下は「リーダーに恥をかかせてなるものか」と当事者意識が高まり、ますます能動的に取り組む。同僚は「あいつとリーダーを助けてやろうぜ」と一体感が高まる。

 人間は不思議なもので、「仲間のためなら」一肌脱ぐ気持ちを持っているらしい。組織に一体感を生むには、双方の成功に貢献しあう関係(エンゲージメント)が必要なのだろう。組織へのエンゲージメントが高まれば、人は使命感をもって取り組めるようになる。

トップダウン型は負の連鎖に

「リーダーによるトップダウン型は責任の所在が明確」という論理は一見、単純明快なようでいて、人間心理を無視したリクツのように感じる。

 発案者の自分が失敗の責任をとったところで笑いものにされるだけで、責任を負うことに対するモチベーションが全く湧かない。ゆえにいかにして責任をとらずに済ませるかという逃避的な心理に陥りやすい。部下は部下で白々とリーダーの右往左往を冷めた目で見るだけだから、やはり責任をとる気はない(そもそも責任はない)。結果、誰も責任をとらなくなる。

小泉旋風と「抵抗勢力」

 日本では2000年代初頭に小泉元首相の活躍が拍手喝采を浴び、「小泉旋風」が吹き荒れた。その頃から「強いリーダーシップ」「トップダウン型の改革」が日本中でもてはやされるようになった。強いリーダーに意見すればいつの間にか「抵抗勢力」と呼ばれるようになった。

 しかし小泉旋風からかなりの時間を経過して見えてきたのは、責任をとらずにどこかへ消えてしまったリーダーたちと、大失敗に終わったプロジェクトの数々、そして失われた時間とお金だ。