宇宙(地球を含む)と物質の成り立ちを探求し、人間の存在など根源的なテーマの研究に関わる施設を日米欧の物理学者が北上山地(東北地方)に建設しようとするものである。

 科学技術の発展に寄与することは言うまでもないが、それ以上に多くの国家と技術者が関わることで、日本国家や国際的な安全保障の視点からも等閑視できない。

 このように、日本が主導的な立場で関わってきたILCであり、北上山地が候補地に挙げられてきたのも「さもありなん」であったのだ。

どんな役割が期待されるのか

 ジュネーブ(スイス)郊外にフランスとの国境をまたいで設置されている陽子と(反)陽子を衝突させるハドロン衝突型の大型加速器(Large Hadron Collider : LHC)(ちなみに電子-陽電子の衝突はレプトン型と呼ばれる)がヒッグス粒子を観測したが、LHCで出現するヒッグス粒子は100億回の衝突で1個でしかない。

 これに対して、ILCでは160万回の衝突で1個のヒッグス粒子が生成され、ヒッグス粒子が他の粒子に姿を変える(崩壊)様子や、他の粒子との力のやり取り(相互作用)などに関する豊富な情報を得ることができるとされる。

 単純計算で6250倍のヒッグス粒子を生成することから、ILCは「ヒッグス・ファクトリー(工場)」とも呼ばれる。

 宇宙はどのように始まったのか、そしてどうなるのか? 宇宙はどんな仕組みで、何でできているのか。肝心な、我々はなぜこの宇宙に存在しているのか。人類が共通に抱いてきた諸々の基本的な問いに答えようとするものである。

 LHCで解明できなかった多くの謎がILCで解明できるとされるが、宇宙は深淵でこれまでわかったことは謎の5%に過ぎないとも言われる。分かったとみられる先に、また謎が浮かび上がってくるに違いない。

 我々が今日直面している異常気象や気候変動を解くカギを与えてくれるかどうかは分からない。しかし、意外なところにヒントがあるかもしれない。とにかくやってみる意義はあるに違いない。

 わずか100年の人間は言うまでもなく、人類の出現も地球の誕生も広がり続ける宇宙に比すれば「針の先」の期間でしかない。