「こんなに大事なの?」重責に身震い
峰勝鋼機は、1959(昭和34)年からバネだけで事業を行う企業。
「1台の車には4000個ぐらいのバネが使われているし、シャープペンシルの先にもバネがある。小さなものから巨大な発電所まで、バネがないと人間の生活が成り立たないとまでは言いませんが、相当不便になるでしょうね」(林会長)
さまざまな種類のバネから、顧客の用途や使用条件、運用方法などに合わせて、どんなバネを使うのが最適か考え、無ければ新しく作り出す。バネのフルオーダーメードが同社の売りだ。
同社の約60年にわたるバネづくりの歴史の中でも、「イザナギ」衛星に使われたほど小さくたたんで大きく広げる例はない。さらに宇宙に製品を送り出すのは初めてだ。
峰勝鋼機の社員達は、衛星の守秘義務もあり、自分たちが手掛ける板バネが何に使われるのか、衛星全体に占める役割を細かく分かっていたわけではなかったと吐露する。
「最前線で担当させて頂いていましたが、ある日、アンテナの展開テストに同席させてもらったのです。アンテナがバネの力で開いている様子を目の当たりにして、急に重責を感じ始めました。『うわ、こんなに大事なの?』と。身震いがしています。今も」(営業係 係長 東口公俊さん)
打ち上げ後、アンテナは無事に展開されたことが確認された。だが、「バネ開発に終わりはない」と林会長が言う通り、より良いものを求めて八坂所長と共に開発は続いている。
「八坂先生は究極を極めようとされています。我々が材料工学的に『大丈夫かな』と思うぐらい、どれくらい断面積を薄くしても弾力が保持できるか研究を続けています。2号機は1号機より打ち上げ費用は抑えつつ、もっと立派なものになるでしょう」