大電力が必要な電源系開発で難しかったのは「変換効率と機器寿命のジレンマ」だという。
「太陽電池パネルで発電したものをいったんリチウムイオン電池に蓄えて、必要な時にどんと出す。どうしても電池から出力機器などに渡す際に変換ロスが生じます。一方、昼夜の温度差(200℃程度)が激しい宇宙環境でなるべく故障しないように、かつ、機器寿命を確保しようとすると、機器の持つ最大電力に対する使用率を25%ぐらいと想定した部品選定をすることになる。しかし、その使用率では、変換効率は地上の機器に比べて低くなってしまう点が悩みどころ。現状では1号機と2号機は同じデバイスを使っているが、変換効率を改善するには新しいデバイスを使うのもありかもしれないと考えている」
たびたび紹介しているように、いったん打ち上げたら修理に行けない人工衛星の場合、「壊れないこと」が何より求められる。そのため機器は宇宙で使われた実績がある、信頼性が高いものが使われる。だが、宇宙用機器はコストも高いし、性能的には最先端のものとは程遠い数十年前の製品になりがちで、そこが開発者の最大のジレンマだ。昭和電気研究所はQPS研究所と相談し、新たな挑戦を行う。
「宇宙用のCPUは、今我々が地上で使っているものに比べて約100分の1の速度です。その倍ぐらいの速度で動くCPUを『イザナギ』『イザナミ』で使おうとしています。実績ができれば、かなりエポックメイキングなことになると思います」(古賀さん)
宇宙で実績がないCPUを、どうやって使うことに決めたのか?
「CPUチップにとって、宇宙環境で最も怖いのは放射線です。宇宙環境を模擬した放射線の量を、さらに多めにした照射試験を約半年間実施したところ、問題ないことが分かり採用に踏み切ったのです」
このCPUを、電源制御ユニットと姿勢制御ユニットに搭載している。冗長系(予備機)はないので一発勝負だ。
「初号機イザナギと2号機イザナミは実証機という位置づけですから。2機で得た知見をそれ以降の衛星に反映させていこうとプロジェクトでは考えています」(古賀さん)
想像以上に攻めている衛星なのである!
軽量化との闘い
2号機は既に大きな変化がある。太陽電池パネルの枚数が7枚から10枚に増えたことだ。枚数を増やしたことで難しくなったのは「軽量化」である。