反社とパリピ

 前出の「ウルトラ」だが、実際このイベントは「反社」「半グレ」への対応を厳格化している。具体的な対応は、野口氏の著書(『半グレと金塊――博多7億円金塊強奪事件主犯の告白』宝島社)から引用する。どうやら野口氏らも、途中から運営側から「グレー」と見なされ、排除されてしまったようなのだが・・・。

 ウルトラが日本で初めて開催された2014年は、まだ反社、半グレへの対応はほぼなされていなかった。そのためか、VVIP(ブイ・ビップ)エリアは、不良たちが幅を利かせていた。

『半グレと金塊 博多7億円金塊強奪事件「主犯」の告白』(野口和樹著、宝島社)

 だが、2回目の開催あたりから、反社、半グレのVVIPエリアへの入場が規制されはじめた。たとえば「刺青が入っている人間はNG」といった条件がつけられたり、予約の際に名刺を提出させ、その人物や会社も、信用のある有名企業以外は受け付けない、という話も聞こえてきた。

 ウルトラでのオフィシャルHPで「ハッピを着ての入場をお断りする……」という規制も始めた。ハッピを着ているのは、“パリピ”を売りにしている私たちしかいない。私たちを名指しして閉め出していることに等しかった。

 ひとことで言えば、この措置は私たち「パリピ」(グループ)とそこに連なる人脈をイベントから排除する目的だった。

 大手芸能事務所の関係者なども多数、VVIP席に入っていたはずだが、ではその関係者たち全ての人がまっとうな「表社会の住人」たちばかりなのかといえば、決してそうではなかったことを私は知っている

 利用したいときには私たちを存分に利用し、少しでも我が身が危ないと感じれば、すぐに「関係切り」に走る。それが「表の社会の住人」たちの流儀なのだろうか。

 パリピとは、半グレでも反社でもない。パリピは単にパーティやお祭り騒ぎを好む者たちが集まり、日夜パーティや祭りごとにいそしむというものだ。

 ある雑誌には、芸能人と写っている写真が掲載され、〈芸能人と半グレ、パリピの黒い関係……〉といった見出しで報じられたが、これでは芸能人の方に申し訳なさすぎる。

 たとえば芸能人の友人がいたとして、自分が世に言う半グレだとしても、わざわざ素性を明かすわけがない。芸能人の友達や知り合いともなると、こちらは極めて慎重になる。

 メディアも今回の私の事件を受け、一部の芸能人をクローズアップしたものの、私たちの誰と仲がいいのか特定できず、漠然とした関係性を伝えるにとどめていたように思う。

 パリピの友人と私が一緒に写った写真を、パリピも半グレもひとくくりにして(マスコミが)報じていたが、それでは正確性に欠ける。個々に持ち合わせた人脈のなかに(偶然に)芸能人がいたりすることも当然ある。

 だがマスコミは、とりわけ芸能人との絡みの部分だけを報じ、そこを問題視してしまう。そんなことをするのであれば、芸能人など誰とも遊ぶ余地がなくなってしまう。

 文章でもそうだが、一部だけを切り取ると、文脈に沿わない別モノになることが往々にしてある。野口氏は、自分の逮捕に関する一連の記事で、パリピや一部の芸能人のイメージが悪くなり、多大な迷惑を掛けたと嘆息している。今回、野口氏の話を聴いて、キリトリ報道ほど危ういものはないと、筆者も認識を新たにした。