2号機「イザナミ」の設計を担当したオガワ機工設計課の近藤貴太さんは、「プロフェッショナルな方々の意見やご要望をまとめて構想を立て、もんでもらう、その繰り返しが大変だった。いかにシンプルで軽くて強い衛星にするかも苦労した」と語る。
一方、組み立てを担う社員は「今までミリ単位の組み立てだったが、衛星ではコンマ何ミリが主になった。未知の経験ばかりで難しいが面白い」と、難しさも含めて楽しんでいる様子。
ワンチームで衛星の開発を進めてきたQPS研究所×北部九州宇宙クラスターだが、時には突っ走ることもあったと伊藤さんは振り返る。「勝手にどんどん考えて、振り返ったら誰もいないことも(笑)」。
その様子をQPS研究所の大西俊輔CEOは「ひとつの機能を作ろうとしても複数の候補を考えている。アイデアがどんどん出て、むしろまとめるのが大変そう」とパートナー企業の頼もしさを語れば、同社の八坂哲雄研究所長も「我々の協力会社さんはそれぞれ独特のいい技術を持っている。だから『こういうふうにしたい』というと『あ、できるよ』というわけ。物によっては『もっとできるよ』というから『ちょっと待って』と止めたりね」と嬉しそう。
e-SETの課題は、独自の宇宙ミッションを構築すること。
「例えば、月探査やロケットは面白いと思っています」(當房さん)
魅力的なプロジェクトを掲げつつ、10年後、20年後に当たり前に「九州で人工衛星が作れます」と全国からオーダーが来るように。宇宙を志す若者が出ていかず九州で働いてくれるように。やるべきことは多い。
「今は畑を耕す、開墾している状態」(伊藤さん)
宇宙産業という大木を育てるには、いい土壌が必要だ。36機の衛星が打ち上がる頃には、北部九州の豊かな土壌から青々とした新芽が出ていることだろう。