2019年3月、東京拘置所から保釈された後に向かった弁護士事務所を去るときのカルロス・ゴーン被告(写真:ロイター/アフロ)

(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)

 保釈中に海外渡航を禁じられていた日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告が、レバノンへ逃亡しました。同国のセルハン暫定法相は2日、ゴーン前会長の日本への引き渡しは困難との見通しを示しています。今回、事件を理解するために抑えておきたいポイントをニューヨーク州弁護士のリッキー徳永(徳永怜一)さんに解説してもらいました。

ゴーン氏の容疑はなにか

 まずは、なぜゴーン氏は逮捕・起訴されたのか振り返ってみましょう。ゴーン氏の容疑は以下の2つでした。

<金融商品取引法違反>
 自らの報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪です。昔の証券取引法違反で、堀江貴文氏が逮捕された犯罪です。両者の違いは、堀江氏は過剰売上計上でしたが、ゴーン氏は報酬の過少申告です。

<会社法違反(特別背任罪)>
 特別背任罪で日産自動車が検察庁に、ゴーン氏に対して刑事告訴をしました。理由は、ゴーン氏が自己の利益のために不正に会社の資金を支出したためです。検察はその後ゴーン氏を起訴しました。

 上記どちらの罪も罰則は重く、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその両方とされています。

 これら罪でゴーン氏は起訴され、裁判所が保釈許可をしました。保釈には条件がいくつかありますが、その条件を破ると保釈が取り消され、保釈金が没収されることがあります。ゴーン氏の保釈金は15億円です。海外逃亡をしたため、その保釈金は没収される見通しとされています。