サウジアラムコと異なり、ペトロブラスは国営石油会社でありながら「政府に民間事業者の生産水準を決定する権限はない」との主張を貫いており、かつてもOPEC加盟の動きがあったが水泡に帰したという経緯がある。カタールやエクアドルの相次ぐ脱退により求心力の低下が続く中、OPECの実質上の盟主であるサウジアラビアが、ボルソナロ大統領から「OPEC加盟を検討する」旨の発言を引き出した切り札は何だったのだろうか。

 ボルソナロ大統領との会談後にサウジアラビアのムハンマド皇太子が明らかにしたのは「ブラジルへの100億ドル規模の投資計画」である(10月31日付日本経済新聞)。ブラジルへの大規模投資を引き換えにOPEC加盟を呼びかけたというわけだ。

拡大が止まらないサウジの財政赤字

 だが、自国経済が苦境にあるのにサウジアラビア政府は大金をブラジルに投ずる余裕があるのだろうか。

 サウジアラビアの首都リヤドでは10月29日から31日にかけて同国の改革をアピールするための国際会議「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」が開かれた。

 初めて開かれた2017年当時は世界各国の政治指導者や経済界の要人が集まる「砂漠のダボス会議」になると期待されていたが、昨年のFIIはサウジアラビアの記者殺害事件を受けて欧米の参加者が激減した。今年のFIIは欧米からの参加は回復しているものの、サウジアラムコの新規株式公開(IPO)が円滑に進んでいないことから2017年に見られたFIIに対する熱気はなくなっている(10月26日付ロイター)。

 石油以外の製造業などの分野で数百万人の雇用を創出することを目指したプロジェクトでも、外国資金の誘致に苦戦している。サウジアラムコのIPOで調達した資金を活用して新産業都市(NEOM)を建設する構想も、民間部門の投資分野ではほとんど計画が進展していない。

 サウジアラビアの今年の石油部門の成長率はマイナス3.1%の見込みであるのに対し、非石油部門の成長率は2.7%増にとどまる見通しである。増え続ける労働人口を吸収するには成長のスピードがまったく足りていない

 OPECプラスは供給を絞り込んで価格引き上げを目指す協調減産を続けているが、サウジアラビアの財政を均衡させるために必要な価格水準に達していない。2020年のサウジアラビアの財政赤字は500億ドル規模にまで拡大する恐れがある(11月2日付アルジャジーラ)