(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)
米WTI原油先物価格は、米中間の貿易協議に対する楽観などから上昇傾向になりつつある(1バレル=50ドル台後半)。10月30日、米FRBが今年3度目の利下げを行ったことも原油市場にとって追い風となっており、ヘッジファンドによる買い越し幅が再び拡大しつつある。
高水準を維持する米国の原油生産量
まず供給サイドの動きを見てみよう。
ロイターによれば、10月のOPECの原油生産量は前月比69万バレル増の日量2959万バレルとなった。9月に石油施設の攻撃を受けたサウジアラビアの原油生産量は前月比85万バレル増の同990万バレルと急激に回復した(合意水準は同1131万バレル)ものの、減産対象11カ国の遵守率は140%と高水準である。
世界第2位の原油生産国であるロシアの10月の原油生産量は前月比2万バレル減の日量1123万バレルとなり(合意水準は1117万バレル)、OPECと非加盟産油国からなるOPECプラスの10月の協調減産遵守率は70%を超えた。
世界第1位の原油生産国である米国の原油生産量は過去最高水準(日量1260万バレル)で横ばいとなっている。米エネルギー省によれば、8月の原油生産量は日量1237万バレルとなり、今年(2019年)の原油生産量は前年比130万バレル増の日量1230万バレルとなる見通しである。原油の輸出量もコンスタントに日量300万バレルを超える一方、輸入は600万バレル台にとどまっており、米国の原油の対外依存度の低下傾向は続いている。9月の石油貿易は40年ぶりに輸出超過となった。
だが将来の原油生産の目安となる石油掘削装置(リグ)稼働数は、11カ月連続で減少を続けており2017年4月以来の低水準になった。前年同期の875基に対し691基まで減少したが、リグ1基当たりの生産量が大半のシェール鉱区で拡大していることから米国全体の原油生産量は高水準を維持しているようだ。
次に需要面を見てみると、世界最大の原油需要国である米国では原油在庫が増加傾向にあるものの、足元のガソリン需要は日量978万バレルと夏場の需要期並みの水準まで増加している。世界第3位のインドの9月の原油処理量は前年比7%減の日量474万バレルと2016年5月以来の低水準となっているが、需要面では現状よりも先行き不安が重視されているきらいがある。