2019年4月22日に開かれた中国海軍創設70周年の記念イベント(写真:新華社/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 日韓関係が軍事面においても悪化しているにもかかわらず、トランプ政権は「北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射しても問題視しない」という姿勢は崩そうとしない。要するにトランプ政権とりわけ大統領再選(すなわちアメリカの一般世論)にとっては、東アジアの安全保障環境などはアメリカ自身に火の粉がかからない限り、さしたる関心事ではないということが如実に示されている。

 このようなアメリカの基本姿勢が、中国が推し進めている海洋軍事戦略に有利に働いていることは間違いない。

 南シナ海や東シナ海問題では中国海軍が覇権を手中に収めつつある。だが、アメリカが中国から直接攻撃を加えられる恐れはないし、アメリカの国益に直接大きな損害が与えられるわけでもない。したがって、トランプ大統領が大きな関心を示すことはないのである。しかし、このようにトランプ政権がさしたる関心を示さないでいる現在においても、中国海軍は着実に海洋覇権を獲得するために、次から次へと様々な手を打ちつつある。

 アメリカ軍やシンクタンク関係者などの中からは、そうした状況に大いなる警鐘が鳴らされている。中でもとくに警戒すべき中国海軍の「次の一手」の1つが、間もなく誕生する075型強襲揚陸艦である。

世界第2の水陸両用戦力が誕生

 強襲揚陸艦とは、上陸部隊(海兵隊や海軍陸戦隊など)とその装備(戦車や装甲車両を含む)、航空機(各種ヘリコプターや固定翼SVTOL戦闘機など)、上陸用の小型舟艇、ホバークラフト、水陸両用装甲車両などを積載することができる水上戦闘艦である。各種装備の積載のために、航空母艦のような全通飛行甲板と、揚陸艇やホバークラフトや水陸両用車が発着できるウェルデッキ(写真参照)とよばれる機構を有している。

ウェルデッキに着岸した揚陸艇(写真:米海軍)