8月15日、解放記念日である「光復節」の式典で演説する文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 文在寅大統領が、日本の輸出管理の運用後にとった対応、および光復節の際に行った演説は、文大統領の「やぶ医者」ぶりを露呈した。心臓病の患者に癌の治療を行っているようなものであり、誤った診断の結果、誤った治療を行い、病気をさらに悪化させているようなものだ。

 それは、輸出管理の運用問題にきちっと対応していないこと、経済政策でその根本的原因を取り除くことなく、日本に責任転嫁しようとしていること、北朝鮮との経済連携で国民に夢を与え、失政の原因を隠していることなどである。

韓国は北朝鮮への制裁を遵守しているのか

 日本のとった輸出管理の運用の変更、すなわち、フッ化水素など3品目を包括許可から個別審査に切り替える措置、韓国を「ホワイト国」からの除外する措置は、韓国が主張するように「元徴用工」問題への報復ではない。日本から韓国に輸出された、軍事に転用可能な物資が、不適正に管理されていること、韓国からさらに第三国に転売されていたことが判明し、安全保障上の懸念を取り除くために必要な措置をとっただけである。したがってこれは禁輸ではなく、適正な取り扱いがなされていれば輸出は許可される。日本の輸出管理の専門家は、韓国経済への影響はさほど大きくないとしている。

 しかし、韓国から転売された国は北朝鮮と深いかかわりのある国が多く、韓国の言うように日本が濡れ衣を着せたとは一概に言い切れない。加えて、韓国の瀬取り取り締まりへの協力は十分ではない。それ以上に、平昌オリンピックの際の万景峰号を韓国の港に入港させたこと、文在寅大統領の平壌訪問の際、通常は2機だけの飛行機を4機も北朝鮮に派遣したこと、昨年ミカン400トンを軍用機で4回に分けて北朝鮮に贈ったことなど、北朝鮮制裁に対する韓国政府の協力態勢に疑念が向けられており、疑い出したらきりがない状態だ。こうした中、第三国への転売疑惑が持たれている取引について、韓国が適切な対応を取らない限り、疑わしい取引を行った企業等について、日本の審査は厳しくなるのではないか。