2018年5月、東京で開かれた日中韓サミットで顔を揃えた中国・李克強首相、安倍晋三首相、韓国・文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 私は、今の日韓関係を悪くしているのは文在寅政権で、韓国の一般の人々は日本に対し決して悪い感情は抱いていないと思っている。だからこそこれまで、文在寅氏批判は繰り返しても、韓国や韓国人に対する対応は別物として批判しないようにしてきた。

 しかし、昨今の日本製品不買運動や反日行動を見ると、さすがに違和感を抱かざるを得ない。というのも、韓国人の日本に対する対応と中国に対するそれがあまりにも違いすぎるからだ。しかも、そのことを韓国人は意識していないのだから、困ったものである。彼らは無意識のうちに、あるいは反射的に、中国へは追従し、日本には怒りを隠そうとしない。この思考パターンを改めずして、韓国人の日本に対する客観的見方も公平な対応も期待できないと思うので、ここでは敢えて指摘したい。

 中国が韓国に対して行っていることは、以下に述べるように相当悪質だ。なのに中国には唯々諾々と従い、戦後、韓国の復興に力を貸し、現在は正当な主張をしているだけの日本に、なぜこうも噛みつくのだろうか。

 中国が韓国にした大きな出来事を、現在から過去に遡りながら挙げてみる。

1、地上配備型迎撃ミサイル「高高度防衛ミサイル」(THAAD)配備問題をめぐり、中国は報復措置として、韓国製品不買運動、中国人の韓国旅行の販売停止などの報復を行い、韓国企業に甚大な被害を与えた。

2、中国は、高句麗は中国の一部と主張し、歴史を歪曲している。

3、中国は、朝鮮戦争に介入し、多くの韓国、朝鮮人を戦死させたばかりか、南北の分断を固定化させた。

4、元は、1231年から1273年まで、当時の高麗を攻撃し続けて、王朝を屈服させ、多くの朝鮮民族を苦しめた。

 中国と日本を比較し、韓国の対応がどうであったか検証してみたい。

「THAAD報復」にも韓国の反中行動はなし

 韓国政府が2016年7月に米軍のTHAAD配備先としてロッテグループが所有する土地を提供すると、中国における韓国企業に対する締め付けが厳しくなった。

 特にロッテは、中国に展開する多くの店舗で税務調査や消防衛生検査を受け、その結果、罰金を課せられたり営業停止処分を受けたりする事態が相次いだ。これに耐えかねたロッテは、ショッピングセンター「ロッテマート」を中国から事実上撤収させることを決めた。

 また、化粧品会社は税関審査と衛生承認手続きが強化され、中国市場へのアクセスが難しくなり、営業利益が急減している。さらに中国は国内の旅行会社に韓国ツァーの販売を停止するよう「口頭」で正式に指示しており、その状態が2年以上続いている。以前は中国人観光客の「爆買い」で賑わったソウル市内の化粧品販売店の中には、売り上げが70%減ったところもある。

 現代自動車は北京現代の北京第1工場を稼働停止することを決めた。これはTHAAD報復による販売不振が2年も続き、改善の兆しが見えないことが原因と言われる。