「失敗のリスクがゼロでないことを、ほかの分野ではどう考えるんですかね?」
津田プロマネ曰く「とんでもなく貴重なもの(試料)を手に入れた今、それを手放すリスクがほんの少しでもあるなら、覚悟が必要」と。
ある記者が「リスクがゼロの探査なんてない」と述べると、津田プロマネは安堵の表情を浮かべつつ「それは私の考えとも合うが、それが常識かどうか」と悩んでいる。もちろん、1回目の着陸についてはデータを評価し、再現できる自信はあるという。
「探査機がどう動いたか評価した結果、想定された動きの中で全部進行していた。再現できる自信がある。個人的にはやれると思っている」
しかし、はやぶさ2の資産価値が上がった今、雷と地震は同時に起きない(トラブルは二重三重には起きない)と思うものの、宇宙にいる限りリスクはある。ありえないリスクが起こる確率がゼロではないことも考慮しなければならない、とも津田プロマネは語る。
一方、藤本正樹JAXA宇宙科学研究所副所長は、「NASAなら(はやぶさ2のように)2回着陸するミッションをそもそも設計しない。リスクをとらない提案でないと通らない」と意外なことを口にした。「日本は予算がないから、何機も探査機を上げられない。ある程度リスクをとらないとリターンが得られないミッションを遂行している」というのだ。
さらに「日本は科学者とエンジニアが連携しているのも特徴です。NASAは科学者が成果を出すためにエンジニアに発注する。小惑星探査は日本の理工連携のやり方が向いている。だからこそ、一歩先に行くことが大事」とこの分野の日本の優位性を説く。
2回目着陸成功の意義は?
「日本の立場が確定するでしょうね。今後の国際協力で予想されるしんどい交渉も有利になるでしょう」(藤本副所長)
日本は今後、火星の衛星からのサンプルリターン「MMX(Martian Moons eXploration)」などを国際協力により実現したいと頑張っているところだ。