コワーキングスペースの立地は、どのような意味を持つのだろうか。

 ここ最近、耳にすることが多くなった「コワーキングスペース」。フリーランスや特定のオフィスを持たない小規模事業主などが利用する仕事空間といえよう。

 彼らの多くは、パソコンとスマホなどいくつかのアイテムがあれば“どこでも”働くことができる。だが、実際はコワーキングスペースを選ぶ上で、 “場所”を重要に考えているようだ。働く場所を選ばなくても仕事ができる彼らは、なぜ働く場所にこだわりを持つのか。

「コワーキングスペースについて調査したところ、利用者や店舗の事業者は、店舗の立地を非常に重視していることが分かりました。さらにその内容を深く分析してみると、コワーキングスペースの雰囲気や利用者の属性にこだわりを持つ利用者像が明らかとなり、コワーキングスペースはその街の縮図ともいえそうなことも分かってきました」

 こう話すのは、國學院大學経済学部の山本健太准教授。なぜ、コワーキングスペースの利用者は場所を重視するのか。研究の結果をもとに紹介していく。

【前回の記事】「クリエイティブな産業はなぜ大都市で発展するのか」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56411

國學院大學経済学部准教授の山本健太氏。博士(理学)。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。九州国際大学特任助教、同助教、同准教授を経て現職。地理学の視点から日本の経済・地域経済の振興を研究する。「ひたすら歩き、話を聞くことで地域の経済が見えてくる」を信条に、フィールドワークを中心とした実証主義に基づく研究を続ける気鋭の地域経済専門家。

首都圏と関西圏、コワーキングスペースの分布に差

――今回は、先生の調査結果をもとに、コワーキングスペースと場所の関係を考えたいと思います。

山本健太氏(以下、敬称略) コワーキングスペースやその利用者というと、働く場所を選ばない自由度の高さをイメージするかもしれません。しかし、実際はコワーキングスペースと場所の関係は強く、さまざまな傾向が見られます。

 顕著な例が、全国47都道府県におけるコワーキングスペースの分布です。主要なポータルサイトに登録されているコワーキングスペースの数を都道府県ごとに調べたところ、表のような結果になりました。