近年、「コワーキングスペース」という仕事空間が急速に増えてきた。フリーランスや特定のオフィスを持たない小規模事業主などが主に利用し、同じ空間で仕事をすることでコミュニケーションを取り、各々の得意分野を生かしながら協働する。そのような場所が「コワーキングスペース」だ。
ただし、働き方のスタイルや機能面などが取り上げられることは多いものの、コワーキングスペースが持つ機能性や、その空間から生みだされるイノベーションの過程などを細かく検証したものは少ない。國學院大學経済学部の山本健太准教授は、「コワーキングスペースを産業集積という視点で捉えると、違った側面の可能性やポテンシャルが見えてくる」と語る。
同氏は、特定の産業などが特定の地域や範囲に集中して立地する現象「産業集積」の研究者。「コワーキングスペースというと、働き方やそこで生まれるシナジーの質に議論の中心があったが、コワーキングスペースを産業集積のひとつとして捉えると、大都市の持つ“文化創造性”ともつながっていくことに気が付かされる」という。山本氏の話をもとに、その意味を考えていく。
大都市の「文化創造性」が高いのはなぜか
――山本先生は「産業集積」について研究されていますが、そもそもどんな研究でしょうか。
山本健太氏(以下、敬称略) 産業集積の研究とは、簡潔にいえば「なぜその地域でこの産業が発展したのか」を、地理、歴史、風土や文化など、あらゆる側面から考察する学問だと捉えています。
特に私が着目しているのは、文化産業と地域の関連性です。アニメや演劇、エンタメといった文化産業、コンテンツ産業は、大都市で発展する傾向があります。なぜ特定地域で「つながり」ができるのか、産業構造と大都市の関係性を分析してきました。