飲食店でのプラスチック製ストロー廃止が相次ぐなど、環境意識は日に日に高まっている。その流れを加速させたひとつが、国連の定めたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)であろう。達成のためには、環境や自然の価値を今一度強く認識することが必要不可欠だ。
前回の記事:「サステナビリティなき東京オリンピックに世界が警鐘」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54820)
「自然環境は、非常に危機的な状況となっています。だからこそ、その価値の見直しが必要です。たとえば『森林』の減少は進んでいますが、日本には古くからその森林を守ろうとしてきた文化があります。今こそ、そこに光を当てるべきではないでしょうか」
そう話すのは、環境学や持続可能な社会を研究する國學院大學経済学部の古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)教授。自然の代表格といえる「森」はどのような状況であり、日本はそれをどんな文化で守ってきたのか。古沢氏の話から紐解いていきたい。
世界で進む伐採。日本は“森林大国”だが・・・
――今回は、森林をテーマに考えていきたいと思います。森林の状況は、やはり危機的なのでしょうか。
古沢広祐氏(以下、敬称略) そうですね。森林の保全は、現代において周知なテーマのひとつですが、しかし状況は深刻化しています。
たとえば、地球温暖化などを問題にするとき、その要因として、人間が排出する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスがよく挙げられます。これを抑制することは人類の大きな課題ですが、一方で、気候変動の要因として「森林減少」があることも忘れてはいけません。国際機関のデータ(IPCC第5次報告書)では、気候変動の要因の約10%が森林減少など土地利用の変化によるものだと発表されているのです。
森林は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。地球にとって肺の役割を果たしていることは、多くの人がご存じでしょう。しかし、現代に入っても、違法伐採を含めた過剰な森林の伐採は、世界各地で起こっています。特に20世紀から21世紀にかけて、森林は大幅に減少しました。現在は、熱帯林地域の破壊が問題となっています。