英国ウェイマスにあるオリンピックシンボルの石像。

 2015年に国連主導で定められたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)。骨子となる17の大目標を達成するには、世界各国が足並みをそろえることが必須といえる。そしてそのために、実はオリンピックの存在が極めて重要となっている。

前回の記事:「SDGsで読み解くと、こんなに深い『ワラ』文化」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54612)

「サステナビリティ(持続可能性)が重視される近年、オリンピックは各国が足並みをそろえ、合意形成をする場として有効になっています。一方、その視点で日本の現状を見ると、多くの問題をはらんでいると言わざるを得ません」

 このように語るのは、環境学や持続可能な社会を研究する國學院大學経済学部の古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)教授。東京2020オリンピック・パラリンピックが迫る中、SDGsとの関係性とはどのようなものなのか。そして「問題をはらんでいる」という日本の実情とは。古沢氏に聞いた。

國學院大學経済学部教授の古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)氏。大阪大学理学部(生物学科)卒業、農学博士。NPO「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事、NPO日本国際ボランティアセンター(JVS)理事、(一社)市民セクター政策機構理事、國學院大學では2011年より学際的研究プロジェクト「共存学」のプロジェクトリーダーを務める。著書に『みんな幸せってどんな世界』(ほんの木)、『食べるってどんなこと?』(平凡社)、『地球文明ビジョン』(NHKブックス)、共著に『共存学1~4』(弘文堂)などがある。

近年のオリンピックでは「サステナビリティ」がカギに

――今回は、SDGsとオリンピックの関係性についてお話を伺いたいと思います。持続可能性という視点でこのイベントを捉えた時、近年その重要性は増しているのでしょうか。

古沢広祐氏(以下、敬称略) はい。SDGsは、環境や経済、社会といったあらゆる領域の目標が掲げられ、全世界が“誰も取り残さず”同じ目標を目指すことが趣旨となっています。つまり、あらゆる分野・業界の人々、そしてあらゆる国の人々がトータルに連携し、シナジーを生まなければなりません。

 そう考えたとき、実はオリンピックというイベントは全世界が足並みをそろえるための良い契機となります。実際、サステナビリティに対する議論が過熱する近年、世界が同じ目標や課題意識を共有する場として、オリンピックが有効に活用され始めています。

 一例を挙げると、開催都市や開催国が、持続可能な社会を見据えた場作りをしているのです。