地球温暖化や気候変動、経済格差による貧困など、地球の環境や社会情勢は明らかに深刻化している。2015年には、その状況を打破する施策として、国連でSDGs(Sustainable Development Goals)が採択された。
これは、「持続可能な開発・発展のための目標」として掲げられたもので、2030年に向けて“全世界”が共通で目指す17の大目標(ゴール)だ。目標は、経済、社会、環境という3つの分野が網羅されており、国はもちろん、世界中の大企業もこれに基づいた施策を打ち始めている。
「経済、社会、環境において、地球ではさまざまな問題が私たちの想像以上に深刻な状態です。これまでは、各分野で解決を目指す条約が多数作られてきましたが、それらをすべて合流させ、1つの共通した枠組みができたことは画期的だと思います」
このようにSDGsを評すのは、環境学や持続可能社会を研究する國學院大學経済学部の古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)教授。地球環境が悪化の一途をたどる中、SDGsはどんな位置付けなのか。古沢氏に話を聞いた。
地球はあらゆる分野で「後がない状態」
――SDGsの話を伺う前に、今の地球環境はどれほど深刻なのでしょうか。
古沢広祐氏(以下、敬称略) 気候変動や資源の枯渇、生物多様性の問題など、非常に厳しい状況となっています。もっとも分かりやすいのは気候変動ですね。地球温暖化は進んでおり、その健康被害も増えています。イギリスのある医学誌が2017年に発表した内容によると、2000年以降、熱波で危険にさらされる高齢者は1億人以上増えたとのこと。日本でも、今年の夏の異常な暑さは「災害」として捉えられています。
また、大雨による災害の発生件数は、この17年で1.4倍に増加したとのことです。環境問題に関する国家間の条約は数多く締結されてきましたが、それでも歯止めが利きません。21世紀中に平均気温が3〜4℃上昇するという予測も出ています。
資源の枯渇も顕著で、中国は未来の資源を補うためにアフリカの土地を確保し始めるなど、グローバルレベルでは「資源の争い」が起きています。