ある日、事件が起きる。猫のチビが帰ってこないのだ。心配で、いてもたってもいられない有喜子に勝は無関心。「そのうち、帰ってくる。みっともないから騒ぐな」と言わんばかり。結局、有喜子は娘に相談し、ペット探偵社に捜索を依頼する。やってきた探偵は有喜子が憧れる韓流スターと瓜二つ。うきうきの有喜子に勝は「信用ならん!」と喝。子は鎹ではないが、これまでクッションになっていた猫がいなくなったことで、有喜子の不満は爆発。離婚騒動にまで発展してしまう。

「昭和の男」は反面教師!?

 これだから、昭和の男は! 威張り散らしてなんて嫌な奴なんだ。現代の男の子たちはこれが反面教師なのだろう。ご飯が美味しければ、ちゃんと伝えるし、今日、あった出来事も話す。相手に心配事があるのに、知らん顔だなんて一緒に住んでいてあり得ない。妻は奴隷じゃないんだぞ! 映画を観ながら、わなわなと震えてきた。

(C) 2019 西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

 何より一番、ショックだったのは有喜子が恋愛結婚だったと思っているのに対し、勝は見合い結婚だと言い張っているところだ。

 実は遡ること50数年前、有喜子はミルクスタンドで働いていた。毎日、判を押したように同じ時刻に現れて、同じものを注文する客が勝だった。勝のことが気になりながら何も言えず、お見合い話が持ち上がった有喜子だったが、偶然にもその相手が勝だった。かくして2人は結婚。当時、有喜子の同僚の志津子もまた、勝狙いだった。有喜子は彼女を出し抜いたはずだった。だが最近になって、有喜子は偶然、勝が志津子と喫茶店にいる姿を見かけてしまう。