© 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH

 アルバイト従業員らがふざけて不適切動画を撮影し、SNSに投稿、店側にダメージを与える被害が相次いだ「バイトテロ」と呼ばれる行為はなぜ、繰り返し引き起こされるのか。原因の一つと言われているのが「人手不足」である。人手不足だから、そういう問題行動を起こしそうな人すら雇わざるを得ないというのではなく、何か問題を起こしそうな気配があっても、彼らが辞めることを恐れ、上司が注意できないのだという。あるいは上の者が彼らの不満が爆発する前に気づく余地のないほど、自分の仕事で手いっぱいということもあるだろう。人手不足が引き起こすコミュニケーション不足。飲食店に限らず、どの業界でも問題視されている。

『希望の灯り』を見て、こんな職場なら、誰もこんなことをしでかさないだろうと思った。巨大スーパーのバックヤードで深夜に働く人々のささやかな生活を描いた物語だ。好きなことを仕事にするのは難しい。でも仕事を好きになることは本来ならそんなに難しくないはずだ。

ワケあり主人公に優しい同僚たち

 全身にタトゥーのある青年クリスティアンは郊外のスーパーマーケットで飲み物の在庫管理係の職を得る。どう見ても、わけありそうな彼を責任者は何も聞かず、迎え入れる。一回り大きめの制服を与え、首や腕のタトゥーをそっと隠してあげることも忘れない。

 コミュニケーションが苦手なクリスティアンはほとんど口をきかない。挨拶もできない。でも、周りの大人たちはお構いなしに話しかける。「新人さん、しっかり稼いで!」。おっちゃん、おばちゃんの集団は、きっとこれまで悪い事もしてきたのであろうクリスティアンを拒絶したりしない。最初から仲間として招き入れる。

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「神聖なる空間へ、ようこそ」。敷地外ではたばこを吸ったり、本当はいけないのに期限が切れて捨てられたまだ食べられるお菓子をこっそり食べたり、やりたい放題。だが、「職場」は「神聖」。どんなにずぼらでもマーケット内では誰もが真剣だ。