8月30日から日本でも公開となるレオナルド・ディカプリオ主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)。
クエンティン・タランティーノ監督の描く「昔々ハリウッドで」の物語は、いつもほど血まみれではなく、日本でのレイティングは「PG12」だが、タランティーノ作品「らしく」、その暴力とセックス描写、そして飛び交う卑語から、米国では「R」指定となっている。
米国の「Rating」制度は、あくまでも子供が観るのに適した映画かどうか、親が判断する助けとするもので、連邦政府の法の拘束があるわけではない。
1968年、「the Motion Picture Association of America(MPAA)」により始められて以来、変更を繰り返しながら続けられている。
それ以前は、「ヘイズ・コード」「プロダクション・コード」なる自主規制があり、ハリウッド映画の表現には多くのしばりがあった。
どうしても「検閲」というイメージが先行するが、もともとはスキャンダルまみれの映画産業が、国の検閲下に置かれないための予防策。
1922年、「the Motion Picture Producers and Distributors of America(MPPDA)」(1945年MPAAに改称)の設立に始まる。
100年ほど前の米国は、第1次世界大戦後、ウォレン・ハーディングが「常態に復す(Normalcy)」ことを掲げ大統領に当選して以来、3期続く共和党政権が、「狂騒の20年代(Roaring Twenties)」とよばれる経済が未曾有の発展を遂げる社会を演出していた。
世界の富が集中、「常態」をはるかに超えた「開放」と「高揚感」が人々の価値観を大きく変えた時代だった。
そんな「狂騒の20年代」の空気を今にまで伝えるのが1922年夏のニューヨーク郊外ロングアイランドの架空の地を舞台としたF・スコット・フィッツジェラルドの小説「グレートギャツビー」。
今まで何度か映画化され、2013年にはディカプリオが、1974年にはロバート・レッドフォードが主人公ジェイ・ギャツビーを演じ(ともに邦題は『華麗なるギャツビー』)ている。
ディカプリオ版は音楽など現代的感覚がブレンドされているから、時代の雰囲気を直に感じるならレッドフォード版かもしれない。
イェール大学卒業後、第1次世界大戦に従軍、戦後、ウォール街で働くようになった物語の語り手でもあるニックは、夜な夜な豪勢なパーティを繰り広げる隣人、謎の富豪ギャツビーと心を通わせるようになり、その生い立ち故の心に秘めた思いを知ることになる・・・。