志津子を演じているのは星由里子。倍賞演じる有喜子が清楚なタイプなのとは対照的に志津子は華やかな美人。女が思ってるほど男がもてないことは重々、承知だが、女性というのは女同士でマウンティングせずにはいられない生き物である。有喜子が嫉妬するのも当然。何より、自分には何も言わない勝が志津子には気安く話しているのが腹立たしい。

「昭和の男」を支えた「昭和の女」も素晴らしかった

「見合いで仕方なく結婚したのは知っているけれど、少しでも私のことを気にかけてくれたことはあったのかしら」と積年の思いをぶちまけ、離婚を切り出す有喜子。だが、勝には有喜子にひた隠しにしている秘密があった。そして、ついにこれまで閉ざしてきた重い口を開く・・・。

 なんて奥ゆかしいんだ、勝さん! 猫がいなくなってのあの態度も、探偵に対する激怒も、志津子さんにいっぱい話しかけていたことも、全部、理由があったと知り、さっきまでの憎らしさは一転、胸がいっぱいになった。

(C) 2019 西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

「昭和の男」だって生まれつき、そうだったわけじゃない。きっとこれから生まれてくる「令和」の男の子たちと同じ、生まれた時は何も知らない小さな命だ。それを「男らしく」と言われて育ち、そうならなきゃと去勢を張って、男になっていった。なんでもすぐセクハラと騒ぐのが現代なら、本当はきっと女子より臆病で打たれ弱いであろう男の子たちが「男の子でしょ。泣かないの!」「男は黙って、行動だ」などと無理強いされていないことを祈るばかり。

 小さな男の子が歯を食いしばって「昭和の男」になっていった。平成の男の子たちはもっと肩ひじ張らずに大人になれたろう。令和の男の子たちはどうなっていくのだろうか。

 50年もの間、黙って抱き続けた不器用な思い。こんな昭和な夫婦は絶滅危惧種だと思ってしまうからなのか、愛しくて仕方がない。ただ、自分なら、靴下を脱がせたりしない代わりにもっとわかりやすい人がいいなぁ。「昭和の男」もえらかったけど、それを支えた「昭和の女」も素晴らしい。令和元年、改めて、自分の両親たち世代に頭の下がる思いだ。

(C) 2019 西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』
5月10日(金) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

出演:倍賞千恵子 藤 竜也
市川実日子 / 佐藤流司 小林且弥 優希美青 濱田和馬 吉川 友 小市慢太郎 西田尚美 / 星由里子

監督:小林聖太郎

脚本:本調有香

原作:西炯子『お父さん、チビがいなくなりました』(小学館フラワーコミックスα刊)

作品公式サイト:http://chibi-movie.com/

宣伝:アニープラネット TEL:03-3549-1266

配給:クロックワークス TEL:03-5725-3444

コピーライト:(C) 2019 西炯子・小学館/「お父さん、チビがいなくなりました」製作委員会

配給:クロックワークス