革命防衛隊は、イラン国軍とはまったく独立した別個の軍事組織である。革命防衛隊はもともとはイスラム革命の最高指導者だった故ルホラ・ホメイニの親衛隊的存在だった。それが、ホメイニ周辺でイスラム革命政権の実権を握る保守系イスラム法学者勢力に直結する「軍隊」としてイラン国内で別格的なポジションに位置づけられるようになり、イラン・イラク戦争を通じて優先的に戦力が強化された。結果、イラン国軍より強力な軍隊に成長した。

 もっとも、国軍は政府の指揮下にあるとはいえ、前述したようにイランでは最高指導者に権力の絶対性があるため、政府は外交・安全保障政策もすべて最高指導者の意に従う。したがって、実際のところは、イランには最高指導者の下に軍隊が2つあり、いわば革命防衛隊が1軍、国軍が2軍の二重構造になっている。国外での軍事介入・秘密工作なども、イラン外務省とは別個に、革命防衛隊が独自の判断で行っている。

 なお、前述したように革命防衛隊は傘下に多くの企業を抱えているが、とくに軍需産業、貿易、金融、通信、建設などでイラン国内でも大きな支配力がある。

テロを行っているのは「クドス部隊」

 現在、革命防衛隊のトップは、ムハンマドアリー・ジャアファリ総司令官である。革命防衛隊は、テロ組織と呼ぶには組織がかなり大きい。陸軍、海軍、空軍、特殊部隊(クドス部隊)を持ち、総兵力は12万5000人に達する。その他、国内の弾圧に動員される傘下の民兵組織「バシージ」の兵力が約9万人である。

 ただし、革命防衛隊の中で、国外でのテロ活動に従事しているのは、ほぼ前述の「クドス部隊」に限られる。クドス(クッズ)とは、聖地エルサレムのことだ。クドス部隊は特殊部隊という位置づけだが、実際に行っていることは、武器輸出および対外的な謀略・破壊工作である。したがって、今回、米国は革命防衛隊を外国テロ組織指定したが、実際にはテロを行っているのはこのクドス部隊となる。

 クドス部隊が創設されたのは革命防衛隊創設翌年の1980年。現在に至るまで、その陣容は不明で、欧米の研究機関や報道機関でも数百人説から数千人説まで幅広い。海外でのテロ工作・破壊工作の計画・進行に関わるコアなメンバーが数百人いて、そのバックアップや作戦実行時のマンパワーとして投入される要員が数千人といったところではないかと、筆者は推測している。

 前述したように、イランは一貫して海外でテロ工作を行ってきている。中東諸国では、カショギ記者暗殺で注目されたサウジアラビアの「総合情報庁」(GIP)や、パレスチナ武装組織メンバー暗殺の数々で知られるイスラエルの「モサド」など、テロを実行している国家情報機関は多いが、イランはそれらと比べても、海外で殺害した人数でいえば、突出して多い。

 革命防衛隊はその誕生から現在に至るまで、世界の平和を阻害する札付きのテロ組織だったことは確かである。国内では独裁政権の暴力装置となり、国外ではテロを拡散する。まるでISのような凶悪な軍事組織だが、地域大国イランの国家機関であり、組織的にはきわめて強力だ。むしろISよりも危険な存在とさえ言えるだろう。

(後編に続く)