イランの脅威は核問題だけではない。彼らは同じシーア派のネットワークを中心に、イラク、シリア、そしてレバノンまで至る支配地域を確立しようとしている。イスラム革命以来の「革命の輸出」ともいえるが、実際にはイランを盟主とするシーア派の帝国を作ろうとしているのだ。そうなれば、サウジアラビアなど他のスンニ派系アラブ諸国との緊張も高まるが、なによりレバノンとシリアがイランの勢力圏になることで、イスラエルとの軍事的対決が不可避となる。
現在、イランは核爆弾完成の一歩手前で凍結する核合意を守っているが、イスラエルとの対決となれば、彼らは自分たちを守るために、合意を破棄して核武装する可能性もある。イランの核合意は、核廃棄ではない。その危険な意味を無視するべきではない。
そして、こうした危険なイランの工作を担っているのが、革命防衛隊だ。彼らの活動を放置すれば、イランはこのまま勢力拡大に邁進し、上記のような破滅的事態になりかねない。
イラクやシリアでは、一時期は猛威を振るったIS(イスラム国)の脅威はほぼ消滅したが、その代わりに危険な存在として浮上したのが、革命防衛隊である。革命防衛隊に圧力をかけ、その国外での工作にブレーキをかけることは、中東地域の安全・安定のためにはきわめて重要である。
中東の安全・安定の脅威になっているイラン
今回の事態は、トランプ政権が4月8日、イランの国家権力の中枢ともいうべき革命防衛隊を、米国務省がリストアップしている「外国テロ組織」に指定したことに端を発する(措置の発効は4月15日)。
米国政府は従来、テロ活動を支援する国家を「テロ支援国家」、国際的なテロ活動を行う在野の各組織を「外国テロ組織」に指定している。イラン革命防衛隊については、すでに米財務省が2017年10月にテロ関与で制裁対象にしているが、国務省の「外国テロ組織」に国家の軍事組織を指定するのは、今回が初の事例になる。
外国テロ組織に指定することにより、今後、米政府はこれまで以上に、革命防衛隊関係者の活動を阻害し、革命防衛隊関連の経済活動に強い圧力をかけていくことになる。革命防衛隊は傘下に多くの企業を抱えており、軍事物資の調達や外貨獲得などさまざまな目的で、欧州などで商取引を行っている。こうした取引が阻害されることになれば、革命防衛隊にとっては、大きな不利益が見込まれる。イラン側からの反発は必至で、米=イラン関係はますます緊迫していくことになる。