4月、人工クレーター作成へ

 はやぶさ2初の着陸では、前回までの記事で詳述した通り、誤差3m以内という世界のどこも達成していない高精度が求められた。着陸後の詳細解析の結果、なんと着陸地点は、目標地点からわずか1mしか離れていないことが判明。3億km彼方の誤差1m達成について、「誇れる成果」と吉川真ミッションマネジャーは胸を張る。

 当初、100m四方の範囲に着陸するはずだった計画が半径3mを目指すことになり、その難しさについて津田雄一プロジェクトマネジャーは「甲子園球場全体を目指したのにマウンドを目指すことになった」と表現したが、さらにストライクを決めてしまったようなものだろうか。この技術があれば、どこでも着陸できるのでは、と期待が高まる。

 実は着陸に際して、最後の砦があった。「三途の岩」と名付けた高さ約55cmの岩があったのだ。試料を採取するホーンは約1mの長さがあるので問題ないはずだが、チームはハラハラして見守ったそう。カメラ(CAM-H)の画像を見ると、「三途の石」から約20cmの場所をはやぶさ2はギリギリですり抜け、見事に着陸。多数の岩石のかけらが舞い上がったことから「十分な試料は採取できた」と判断。目標とする0.1gの試料は採れたはずだと。

タッチダウンの瞬間を捉えたカメラ(CAM-H)を指さすJAXA澤田弘崇さん。サンプル採取装置、CAM-H、そして衝突体のリュウグウ衝突時に撮影するカメラDCAM3も担当し、大忙し。

 そこで、はやぶさ2チームは今後の計画を見直し、次の挑戦を「人工クレーター形成実験」に定めた。

 その理由は2つ。1つは、1回目の着陸で試料が十分採れたと判断したこと。もう1つの理由は、初回の着陸でカメラに入る光量が低下したこと。おそらく、飛び散った粒子がレンズに付着した影響と考えられる。通常観測に支障はないものの、次の着陸時に表面の細かい凹凸を捉えるために、性能をよく見極める必要がある。そこで、人工クレーター作成をまず行うことにしたのだ。2回目の着陸は人工クレーターの内部、またはその周辺などに行うことになる。当初は最大3回の着陸を予定していたが、3回目の着陸は行わない可能性が高い。

 計画はこうだ。まず、3月にクレーター形成地付近などの観測を実施。クレーターのビフォー・アフターを把握するためだ。そして4月1日の週に、衝突体をリュウグウに衝突させ、人工クレーターを作る。岩石の舞い上がりが収まるのを待って、4月22日の週に人工クレーターの状態を詳細に観測する。