2月22日7時29分、タッチダウンの瞬間! ホーンの先がわずかに動く。(提供:JAXA)
高度2.9m。ホーンの先端から大量の石や細かい砂があふれ出る。(提供:JAXA)
高度8.0m。エンジン噴射で舞い上がった岩石のかけらが紙吹雪のように。この後、高度約100mまで岩石が探査機と一緒に上ってくる様子がとらえられている。(提供:JAXA)

リュウグウの牙は見掛け倒し?

 リュウグウの不思議は続く。これは別のカメラがとらえた、はやぶさ2着陸後の画像だ。

着陸直後に撮影された画像に着陸予定地点(黄色い〇)を重ねた図。赤い矢印の先の白い点はターゲットマーカー。(提供:JAXA、東京大学など)

 黄色い丸が着陸予定地点だが、その右側(青い矢印で示したところ)に白い石が見える。前後の画像を見比べると、これは1mを超える岩で、はやぶさ2のエンジン噴射の勢いで飛び上がり、1分ぐらい上空をぐるぐる回っているという。「小惑星リュウグウは重力が極めて小さい低重力天体なので、地球の常識からすると『そんなことが』と思うかもしれないことが起こる」と渡邊教授。

 リュウグウの重力は、赤道付近で地球の約8万分の1。体重80kgの人がたったの1gになる世界と想像すれば、確かに地上の常識とは違うことが起こるはずであり、興味深い。

 一体、リュウグウはどんな岩でできているのだろう。渡邊教授は地球上の火山を例にこんな説明をした。「火山に行くと軽い石がありますよね。気泡が抜けてガサガサし、手でたたくと壊れてしまうような。そういう印象が強い。リュウグウの岩は(はやぶさ2の)エンジン噴射で吹き付けると壊れてしまう強度しかない。かなりもろいだろう」と予測する。

 実は、サイエンスチームはリュウグウ着陸前、地表に弾丸を当てても、得られるかけらが少ない可能性を心配していた。しかし、実際に着陸し弾丸を当てると予想通りの量のかけらが飛び出してきた。「岩は見かけ倒しだった、簡単に壊れて細かい粒子を噴き上げるような『はりぼてのような岩』だった」。渡邊教授はリュウグウの印象をそう語る。

 岩の強度はサイエンスの重要なテーマである。なぜ紙吹雪のように破片が舞ったのかも含め、科学者たちはわくわくしながら詳細な解析をスタートさせている。