こうしたことの積み重ねで、山手線の新型電車E235系は、既に十分に進化してきた現行車両との比較においても16%もの省エネを実現した。
比較の対象が1980年代末の初期のインバーター制御車の場合では、SiC化により40%もの省エネになった実例がある。
ハイブリッド車にSiCを用いた試算も行われているが、素子をSiCにするだけで10%の省エネは実現できるとのことだ。
制御に用いるインバーターの中のパワー半導体を、シリコン製のものからSiC製のものに置き換えるだけで、鉄道車両も、ハイブリッド車も、家電も、デジタル機器も一足飛びの省エネが実現できるのだ。
SiCは普及するか
インバーターをこれまでの半分以下のサイズにでき、鉄道車両で16~40%に、ハイブリッド車で10%に達するSiCパワー半導体。
鉄道車両では採用が進んでいるように見えるが、ハイブリッド車に搭載されるのはしばらく先であるようだ。問題はSiCパワー半導体のコストがまだ高いことだ。
半導体の材料は、ウエハと呼ばれる円盤状の板で、半導体物質の結晶を輪切りにして作る。
シリコンでは大口径の結晶を、シリコンを溶融して作ることができ、比較的短時間に低コストで製造できる。
一方、SiCでは気体から結晶を成長させるため時間がかかる。また、結晶の品質管理も難しい。
半導体製造ではウエハ1枚を処理するごとにコストがかかるため、ウエハから何個取れるかによってコストが決まる。