シリコンのインバーターでは、素子が膨大な発熱をするうえ、動作の限界となる温度も低いので、大がかりな冷却システムが必要であり、余裕をもった構造であることが必要だった。
そのため、素子は手のひらのようなサイズでもインバーターは本棚やベッドのようなサイズになっていた。
これに対し、SiCを用いたインバーターは冷却装置を大幅に省くことができ、小型化が可能となる。
例えば、新幹線でSiCを初めて使用したN700S型の試験列車では、走行用モーターを制御するインバーターのサイズをこれまでの半分以下にできた。
鉄道車両では、走行用の機器の他にエアコンや室内照明の電源、エアブレーキのコンプレッサーなど、様々な機器を搭載し、床下は混んでいる。
さらに新幹線では、高圧の交流電流を取り込んで走行するため、変圧器も加わり、インバーターには整流器もセットになる。
そのため、スペースの関係で複数の車両で分担して機器を搭載する必要があり、現行の新幹線では先頭車を除いても6種類の車両が必要であった。
それが、SiCを用いたため、1両に搭載できる機器が増え、2種類の車両にまとめることができた。予備車両の種類が減るし、編成の組み換えもしやすくなる。運用上のメリットは大きい。