なお、この新型新幹線のインバーターは、トランジスタとダイオードの双方をSiCにしたものと、ダイオードだけSiCにしたものが混在している。サイズはダイオードだけをSiCにしたものに合わせざるを得ない。

 それでもサイズが半分以下なので、双方をSiCにすればさらに小型化できることになる。

 さらに、インバーターそのものが省エネできること以上に、SiCを使うとモーターや回生ブレーキの効率アップを実現できる。

 パワー半導体は、電気のON・OFFのスイッチングを繰り返すことにより、電力を制御している。このスピードが速い方がよりきめ細かい制御を実現できる。

 インバーターは三相交流を出力して、モーターを制御するが、交流の波形がきれいな方がムダな部分が減る。ON・OFFの切り替えを細かくすればするほど、波形をなめらかにできるからだ。

 シリコンでは、鉄道車両に使用する場合、IGBTという高電圧に耐えるが動作が遅い種類のトランジスタを使用する必要があった。

 一方、SiCでは半導体材料そのものが高い電圧に耐えるため、MOSFETという高速で動作するものを用いることができる。

 また、トランジスタとセットで使用するダイオードもより高速で動作するSBDを用いることができる。その結果、SiCはシリコンよりも高速でスイッチングができる。

 なめらかな波形の三相交流を作り、モーターの消費電力の低下に繋がる。

 回生ブレーキを作動させる場合、電流を高く取るように設計すると高速でも制動力を維持できるが、シリコンではそれが難しかった。そのため、高速時は機械的なブレーキで補助した。

 SiCでは高速でスイッチングする際の電流の限界が高いため、高速時でも高い制動力を発揮させることができる。機械的なブレーキの補助を少なくできるうえ、回生の効率も良くなった。