2018年、JR東海は、新幹線の新世代車両「N700S」確認試験車の試験走行を始めた。
半導体と言えばシリコンであるが、N700Sを制御する半導体にはシリコンでない物質も使われている。
この新半導体物質は炭化ケイ素(SiC)。
SiCは耐熱性が摂氏1400度と高く、サファイアより硬いという性質のある物質である。これまで、この性質を利用して、研磨剤や耐火材として用いられてきた。
SiCの単結晶を半導体として用いれば、シリコン以上のパフォーマンスを発揮する物性を持っている。鉄道車両では、SiCを使用数十パーセントに及ぶ省エネ実現例もある。
半導体物質としてのSiCは、パソコンやスマホなどの電子機器に搭載されるような微細な半導体を作るに至っていない。
しかし、電力制御を行うパワー半導体の分野では、画期的な省エネを実現するものとして、実用化が進んでいる。
サーバーの電源などの高級な用途での採用が多いが、馴染みのあるところでは、鉄道車両での採用が広がりつつある。将来的には、ハイブリッド車や家電に採用され、圧倒的な省エネを実現することを期待させる。
かつての半分の電気で走る電車をさらに省エネ
SiCが目覚しい成果を上げているのは、鉄道車両である。
現在、山手線では新型電車「E235系」の導入が進んでいる。この新しい電車は、これまでの電車E231系よりも16%の省エネを実現しているという。