田原 最近、『新潮45』が休刊に至った事件があったでしょう。あの一件についてはどう思います?
大川 1つ思っているのは、多様性を尊重するのであれば、多くの反対意見に対して、同じように擁護する主張だってアリだったんじゃないかと。
田原 同感ですよ。僕は『新潮45』に同情しているです。だっていま、雑誌は何やっても売れないんですよ。だからほとんど雑誌の編集長は、半分ノイローゼですよ。どれだけ頑張って作っても売れないんだから。そこで『新潮45』の編集部はこう考えたんだと思う。「常識の逆やりゃあいいんじゃないか」って。
大川 そうですよね。
田原 常識の逆をやっている雑誌は幾つかある。例えばヘイトスピーチ。常識ではヘイトはよろしくないわけだけれど、それを前面に出した雑誌が結構売れたりしている。だから、「LGBTの人たちを社会も受け入れよう」という“常識”とは違う主張をしている杉田水脈を起用しよう、そうしたら売れるかもしれない、と。そんな発想だったと思う。そして現に、杉田が寄稿した号は部数が伸びた。
大川 売れたんですか。
田原 それで、「もう一回やろう」ということになって作られたのが問題の10月号。
大川 なるほど。
田原 編集長にしてみれば、「このままだったら『新潮45』は早晩休刊に追い込まれる。潰れるのを待つくらいなら、常識の逆やってみよう」という気持ちだったと思う。
大川 そこの気持ちはよく分かりますね。
田原 ただ、やり方は稚拙だった。どこ間違えたんだろう。
大川 やり過ぎた、っていうことですかね。そのさじ加減が難しいですよね。
田原 僕は新潮社の人間に言ったんです。「あんなもん簡単だ」と。「一発でいいから、杉田擁護派と杉田反対派の激論をやればよかったんだ」って。
大川 確かに。そうすれば“反常識”である擁護派の意見も載せられるし、本質的な議論も深まりますものね。
田原 そういう発想があったら雑誌も潰れることはなかったと思うんだけどね。でもいまは、そういうことを言う空気がなくなってきているんじゃないかな。
大川 自由な言論をしにくい空気は濃くなりつつあるかもしれませんね。
ホリエモンは逮捕されて、なぜ東芝経営陣は逮捕されないのか
田原 問題は違うんだけど、東芝の粉飾会計事件があったでしょう。7年間も粉飾決算を続けていたわけです。僕なんかは、なぜあんなこと起きるんだと思うわけ。粉飾をしていることは、かなりの社員や役員も気づいていたはずなのに、なぜ告発しなかったのかと。
大川 そうですね。
田原 答えは単純ですよ。言ったら左遷だから。みんなそれを怖がって口を閉ざしていた。
会計をチェックする監査法人も7年間、スルーしていた。なぜか。会計操作を指摘したら監査契約が解除されるからですよ。
大川 なるほど。
田原 もっとひどいのは検察。堀江さんは有価証券報告書の虚偽記載1回で2年6か月の懲役ですよ。
だったら東芝は、歴代社長が3人ぐらい逮捕されたっておかしくないはず。ところが誰も逮捕されない。検察も馴れ合いですよ。なんなんですか、この馴れ合いは。
一番ひどいのはマスコミですよ。テレビも新聞も「粉飾決算」って書かない。東芝が使った「不適切会計」という表現を使う。あんなの粉飾以外の何物でもないですよ。だから僕の番組では初めて「粉飾だ」って言ったんです。要するに、検察、マスコミ、みんな馴れ合っている。
大川 そうですね。
田原 こういう不健全な社会、ぶち壊してよ。
大川 えっ、僕がですか?
田原 これからのテレビは、僕が12チャンネル時代にやっていたような、つまり危ない番組作んなきゃやっていけないと思っています。
大川 そうですよね。それくらいじゃないと見てもらえない時代になってきていますから。
田原 ね、大川さんにもその意識があるでしょう?
大川 そうですね。MXはまだまだ人々に見てもらっていませんから。
田原 もっと過激にやればいいですよ。「こんな危ない番組、やめろ」って言われるくらいの番組を作ろうよ。
大川 はい。わかりました。
次回(「制作費を割けない『朝生』を成立させる3つの条件」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54513)に続く
◎(その1)はこちら
『5時に夢中!』が見つけた主婦向けお色気路線という金鉱
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54487