「下ネタありのトークバラエティ」だった『5時に夢中!』(東京メトロポリタンテレビジョン:TOKYO MX)は、次第に出演者のタブーなしの言論も注目されるようになってきた。だがテレビを含めた言論界は、権力とのなれ合いが目立つようになってきたと田原総一朗氏は危機感を募らせている。TOKYO MX 制作局長、大川貴史氏との対談の2回目をお届けする。タブーやクレーム、権力からの圧力にテレビはどう立ち向かうべきなのか。(構成:阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)
売れっ子になったマツコがMXに出続ける理由
田原総一朗氏(以下、田原) はじめはお色気を売りにしていた『5時に夢中!』は、今では他の番組がやらない過激な言論が飛び交う場になっていますよね。いつ頃からそういうカラーを打ち出すようになったんですか。
大川貴史氏(以下、大川) 意図的にそういう方向にもっていったわけではなくて、番組をやっていくうち、自然にそうなったという感じです。レギュラー出演してくださっている北斗晶さんやマツコ・デラックスさんたちの言論が注目されるようになってきて、その結果、「『5時に夢中!』はタブーなしで、好きなことをしゃべれる場だ」という認識が、出演者にも視聴者にも浸透していったということですね。
田原 マツコ・デラックスっていま売れに売れてるわけだけど、彼女のどういうところが魅力だと思っていますか。
大川 人間に対しても、世の中の事象に対しても、鋭く本質を突く感性を持っている方だと思うんです。僕なんかを含め一般の人とは違う角度とか視点なんですけど、どこかで本質を突いているんだと思うんです。だから、マツコさんの言葉は人に届くっていうか、説得力があるんだろうなと感じています。
田原 自民党の女性議員が同性愛とかLGBTの人に対して、厳しい発言をして批判を浴びましたが、世の中的にはLGBTに対する差別や偏見ってまだまだあると思う。マツコさんも、差別されているという感覚はあるのかな。
大川 そう思いますね。田原さんは古巣の東京12チャンネルを「テレビ番外地」っておっしゃっていますけど、マツコさんも「自分の存在は番外地だ」と考えていると思います。
田原 なるほど。極めて少数派ということだ。
大川 ええ。そこの自覚があるから、言葉にすごく説得力が出てくるというか。
田原 逆になんでも言えるというわけね。
大川 はい。だから、普通のタレントさんであれば、あれくらい売れっ子になるとMXなんかはとっくの昔に出演するのをやめていると思うんです。だけど、いまでも出てくれているというのは本当に感謝をしているのですが、やっぱりMXの「テレビ番外地」という立ち位置が、マツコさんのスタンスとシンクロする部分があるからなのかなと・・・。これは僕の勝手な解釈ですけどね。
田原 売れに売れても出続けてくれるマツコに、MXはそれなりのギャラを出してるんですか。
大川 以前と比べたら出せるようになりました。といっても、たぶん他局さんの10分の1くらいのものだと思うんですけど。本当はもっとお出ししたいのですが、うちとしては精いっぱいの額ですね。