インターネットの登場でテレビは大きな影響を受けている。テレビが守勢に回っているようにも見えるが、日本テレビの土屋敏男氏は「インターネットはだらしがない。もっと面白いコンテンツを作れるはず」と力説する。テレビとネットの関係はどうなっていくのか。テレビを知り尽くしたジャーナリスト・田原総一朗氏が土屋氏とじっくり語る。(構成:阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)
面白い番組が減るのは「しょうがない」
田原総一朗氏(以下、敬称略) 今テレビを見ていても、パワーを感じる番組が少ない。面白い番組が減ってきている感じがするんだけど、その原因はなんでだろう?
土屋敏男氏(以下、敬称略) 僕は、しょうがないと思ってます。
田原 しょうがない?
土屋 インターネットという新たなアウトプットの手段の登場で、国から免許をもらって公共の電波を使うテレビは、以前よりも公的にならざるを得なくなってきました。
公共性を意識しながら番組を作ると、突き抜けたものがやりづらくなるし、少しでも差別的ととられる表現や暴力的要素があったりすると、ネット上で猛烈に批判されたりする。ものを作ってるサイドからすると、「だったらテレビじゃなくインターネットでやればいいじゃないか」ということになっちゃいますよね。
田原 せっかく作ったコンテンツを、何もテレビに振らなくてもいいと。
土屋 ええ。第一、「インターネットvs.テレビ」っていう図式で考えるのってもう古いと思うんです。日本テレビも他のキー局も、インターネットでの配信サービスをやっているし、NHKもネットでの同時配信を目指している。つまりテレビ局が番組を作って、後は電波で出すかネットで出すかっていう違いだけで、それはもう対立する概念ではないって思っています。
田原 僕は、テレビが面白くなくなったもう一つの理由は、コンプライアンスだと思う。コンプライアンスの本当の意味は法令順守だけど、この場合に重要なのは法令じゃない。クレームなんですよ。
昔、例えば土屋さんが最前線でやってる頃は、クレームは電話で来たでしょう。そうするとプロデューサーが電話に出て、「すいません、こういうことは2度とやりません」って謝って捌いていた。
土屋 はい(笑)。