「『朝生』って朝鮮問題を扱っていても、その問題を解決しようって気はないですよね?」(土屋)。 「ない。 他のテレビ局がやらないことをやる。これだけ」(田原)

 刺激的な報道番組に数多く出演する田原総一朗氏は、歴代の総理大臣が一目も二目も置くジャーナリストだ。だが、番組作りで第一に考えているのは「問題を解決することではなく、いかに他局でやっていない番組を作るか」。その精神には日本テレビの土屋敏男氏も大いに同意するという。「テレビの今」をテーマにした2人の対談の最終回をお届けする。(構成:阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)

「組織」ではなく「変な個人」が新しいテレビを作ってきた

土屋敏男氏(以下、敬称略) 田原さんが12チャンネルでいろいろなドキュメンタリーを作っていた時、たぶん会社はあまり認めていなかったんじゃないですか。

田原総一朗氏(以下、敬称略) うん。勝手にやっていたからね。

土屋 でも、やらせてみたら問題もあるけど面白かったと。

田原 そうね。

土屋 テレビの歴史ってだいたいそうなんですよね。萩本欽一さんの番組だって、『オレたちひょうきん族』だって、スタート前には社内に味方なんて基本的にはいなかったわけです。

田原 フジテレビの『ひょうきん族』はすごい番組だったよね。今のお笑い界を引っ張っているメンバーは、ほとんどあの番組から出ている。

土屋 プロデューサーの横澤彪さんは、あの前に『THE MANZAI』という番組を手掛けているんですが、その頃「漫才は古いものだ」っていうのがテレビ界に認識だった。

 でも横澤さんは、たけしさんのツービートを筆頭に新しい血が沸々と沸き上がりつつあることを感じて、アルファベットで『THE MANZAI』という新しい感覚で打ち出したわけですね。

 このときも社内的には大反対だったそうです。漫才なんて古いと。やるとしてもタイトルは、“東西名人寄席”みたいなものにしろと言われたそうです。だけど横澤さんは、「そんなタイトル、絶対ダメだ」って突っ張って、『THE MANZAI』にする。それによって『ひょうきん族』以降につながる新しい時代を切り開いていった。

 だからテレビって、変な個人が我を張ることで新しいものを生み出してきたんですよね。

田原 組織じゃなくて個人なんだよね。