──考え方次第で自分の市場価値を高められるし、自分が活躍できる場も見つけられる。思考法を見につけてこそ、“自由”を手に入れられるということですね。

大金持ちでも退屈で不幸な人がいる理由

──本書には、「人には自分に合った緊張と緩和のバランスが存在する。バランスが崩れていると幸せを感じられない」という話が出てきます。楽しく幸せに働くためのカギとして、非常に納得させられました。この法則は、どうやって導き出されたのでしょうか。

北野 元アスリートの為末大さんとトークイベントをやらせていただいたとき、事前に為末さんから「自分の人生を生きるとは何か」という難しい質問が来たんです。そのとき、人生を例えるものとして、僕の中で一番しっくりきたのがRPG(ロールプレイングゲーム)でした。RPGとは、プレイヤーが主人公をコントロールして敵を倒しながら、最終的な目的を達成するゲームです。実際の人生でも、自分の中の司令塔が自分の体をコントロールしながら、いろいろな出来事に対処していきます。RPGと一緒なんですね。

 じゃあ、RPGの面白さって何だろうと考えたときに、緊張と緩和だなって思ったんです。弱い敵と強い敵が交互に現れる。だから飽きないというわけです。

──成功して大金持ちになって、何でも思い通りになったけど、退屈で不幸せな人っていますよね。ああいう人たちは、緊張がないから不幸せなんでしょうね。

北野 本当にそうですね。僕は、「飽き」をどうやって乗り越えるのかって人類の壮大なテーマだと思っています。実はほとんどのイノベーションは飽きとの戦いから生まれているんじゃないかとさえ思っているんです。イーロン・マスクなんて典型的なんでしょうが、実際にイノベーターは常に自分を緊張状態に追い込んでいないと気が済まないような人が多い。

 ただ、世の中の人はみんながイーロン・マスクのようなイノベータータイプというわけではありません。緊張と緩和の最適なバランスは人によります。仕事においても人生においても、そのバランスをキープすることが重要なのではないかと思います。