北野 僕自身の体験から導き出したものもありますし、他の方々から学んだものもあります。これまでいろいろな業界のトップランナーの方々にお会いして、お話を聞いたり、対談をさせていただいたりしました。なぜ彼らは市場価値が高いのかを紐解いてみると、やはりきちんとした思考法に基づいて行動しているんです。

──思考法のある人は市場価値が高いということでしょうか。

北野 転職の際に思考法や大まかな方向性があれば、市場価値を高められる可能性が高い。成功確率を高められるということですね。

──例えば本書には「どこを選ぶか」の考え方として「成長産業に行くべき」とあります。

北野 いくら自分の技術資産や人的資産が高くても、そもそも衰退している業界に転職したら市場価値は高くなりません。伸びている業界の中からベストな会社を見極めるのが鉄則です。

──ネット上では、大企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきか、という議論があります。会社の将来性という観点ではやはりベンチャーに行くべきですか?

北野 決してそんなことはありません。「大企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきか」という議論は、実は「りんごか、オレンジか」ではなく「青いりんごが、赤いりんごか」みたいな話をしているのと同じで、本質的な部分を見ていません。

 大企業の中でも伸びている事業部や有望な新規事業はあります。一方、ベンチャーでも事業の成長が見込めないところや、自分の市場価値を高められないところはいっぱいあります。あくまでも、その業界や事業が伸びているかどうかを見るべきなんです。「大企業かベンチャーか」というくくり方はやめたほうがいいと思います。