米WTI原油先物価格は4年ぶりの高値(1バレル=76ドル台)を付けた後、1バレル=70ドル台半ばで推移している(10月10日、米国の株式市場の大幅下落を受け、72ドル台に急落した)。
相場を押し上げているのは、米国の制裁によるイラン産原油の輸出の「根絶」である。米国はイラン産原油の輸出量をゼロにするための努力を続けており、イラン産原油の輸出量は4月の日量282万バレルから9月は同172万バレルにまで減少している(10月2日付ブルームバーグ)。10月上旬にはさらに50万バレル減少したとの情報がある(10月8日付OILPRICE)。
米国によるイラン制裁を受けて、原油価格は年末までに1バレル=100ドルに達するとの見方も出るなど(10月5日付ブルームバーグ)10月第1週の原油市場は強気一辺倒だった。米エネルギー省の統計で原油在庫が796万バレル増加(市場予想の4倍)しても原油価格は下がるどころかむしろ若干上昇し、米国とカナダ間が新たな貿易協定が合意されると「世界全体の2割を占める米国の原油需要が増加する」との理由で原油価格は2ドルも上昇した。「強気の見立ては少なくとも次のOPEC総会(12月3日)まで残りそうだ」という観測も高まっている(10月6日付日本経済新聞)。
世界各国で積極的な原油増産の動き
一方、米国と中国の間の貿易紛争が激化しているにもかかわらず、今のところほとんど材料視されていない。
筆者は、「悪材料」をあえて見ようとはしない原油市場がバブルの様相を呈し始めてきているのではないかと懸念している。
中でも気になるのは、市場がイランの供給減ばかりに気をとられ、他の原油国の積極的な増産の動きを軽視していることである。