しかしこうした環境がもともとあったわけではない。PMJでは2010年代半ばから、本格的に働き方改革を進めてきたという。そのきっかけとなったのがIQOSだ。

 「当社は長年、『マールボロ』『ラーク』などの紙巻きたばこを売ってきた会社です。それがIQOSの誕生によって、扱ったこともない電子機器を販売することになり、会社を作り変えるほどの社内変革を迫られました」

 そう語るのは、PMJの副社長、井上哲氏だ。

 IQOSはフィリップモリスが企業の存亡をかけ、巨額の投資をつぎ込んでようやく完成した製品。

PMJの井上哲副社長(筆者撮影)

 この革新的な製品を世界で最初に販売する国として選んだのが、日本だった。2014年に名古屋で試験的に販売を開始。翌年には都内で発売され、2016年から全国販売された。

 IQOSを使ったことがない人のためにその構造と使用方法を簡単に説明しておく(参照=「衰退するたばこ産業で、乾坤一擲の大勝負」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47936)。

 IQOSは電気で熱を発生させる「ホルダー」と、たばこ葉を詰めた「ヒートスティック」の2つに分かれている。

 ホルダーの内部には「加熱ブレード」という刀のような形をした金属の薄い板があり、スイッチを入れるとその部分が加熱される仕組みになっている。

 一方のヒートスティックは、たばこ葉を粉末にしてシート加工したものをひだ状に詰めたもので、通常のたばこを半分の長さにしたような形状だ。

 IQOSを使用するには、ホルダーにヒートスティックを差し込み(これでヒートスティックの内部に加熱ブレードが差し込まれた状態になる)、ホルダーのスイッチを押すだけだ。

 数秒で約300℃までヒートスティックが加熱され、ニコチンを含んだ蒸気が発生する。それを口から吸い込むことによって、紙巻きたばこを吸うのとほぼ同じ感覚で、体内にニコチンを取り込むことができる。