そこは外資系企業だけに、佐藤さんは自らの実力でスイスへの赴任を勝ち取ったようだ。しかしPMJでは基本方針として、社員それぞれが自分の望むキャリアを歩んでいけるよう支援しているという。

 「社員が3年後、5年後に望むキャリアに対して会社が相談に乗り、それに対してアドバイスしたり、それに必要な経験が積める部署に配置したりするといった形で支援することは、会社のカルチャーになっています。業務に必要なら勉強や資格取得のバックアップもします」

 会社が社員の将来像に寄り添い、支援する姿勢を持っていることは、社員の働き方にも少なからず影響を与えているに違いない。

 PMJでは全国に約1900人の従業員を抱えており、他国から異動してきた社員や日本で新たに採用した社員を含め、20国籍以上の外国人が働く。

 スイスの統轄本部やキューブと同じように、勤務時間は各人が自分の裁量で調整しており、特に問題がなければ会社からチェックを受けることもない。

 それも、仕事の内容によって連絡を取り合う国が違っているため、仕事の時間帯が違うからと言われれば納得してしまう。

 人種や国籍・宗教・年齢・婚姻状況あるいは障害の有無などによらず、あらゆる社員が、同一の雇用機会を持つことを大切にするという、フィリップモリスインターナショナル(PMI)の多様性を受け入れる考え方は、ここPMJでも貫かれているという。

 PMJのオフィスエリアはフリーアドレス制で、全体が見渡せる広いフロアに、カフェのカウンターのような長い机や、四角いテーブルセット、立って作業ができるよう自動で高さを変えられる机など、さまざまなタイプの机やいす、ソファが設置されている。

 壁や家具もオレンジや緑、赤など、色彩が鮮やかで、そこが会社のオフィスであることを忘れてしまうような遊び心のある空間だ。

 社員はその日の仕事内容や気分に合わせて好きな席について、自分のペースで仕事を進める。

 ミーティングスペースも、ついたてで仕切られただけの場所もあれば、完全に声をシャットアウトできる場所もあり、議論の内容に応じて選べるようになっている。