なぜ道半ばで震災前の水準を取り戻せたのか
東日本大震災で起きた福島第一原子力発電所の事故によって放射性物質が放出された影響は、日本屈指の景勝地であり、“マス釣りの聖地”としても知られる栃木県日光市の中禅寺湖にも及んだ。
事故を機に、この地を訪れる観光客や釣り客は激減。地域経済を支えてきた漁業関連事業や観光業は壊滅状態となった。
そんなどん底の状態から立ち上がったのが地元の中禅寺湖漁業協同組合(漁協)だ。放射性物質の影響が完全には消えない中、湖に一人でも多くの人を呼び込み、“聖地”に再び釣り客を呼び戻そうと革新に取り組んだ。
その結果、2012年には7000人台まで減った釣り客が、2017年には震災前の1万9000人に手が届くまでに回復したのだ。
その漁協が組合創立55周年と震災前の賑わいを取り戻したことを記念して、5月20日、快晴の空に男体山が映える中禅寺湖の湖畔で、55周年記念感謝祭を開催した。
「本来は50周年に行事を行うはずでしたが、震災によって5年遅れとなりました。この日を迎えるまでに国、県、市はもとより、釣りファンの人たちにいたるまでいろいろな方々に支援をいただきました。みなさま本当にありがとうございました」
漁協の代表理事組合長の福田政行氏は壇上からそう語った。
「しかしながら、湖底にはいまも放射性物質があります。ワカサギに続いて昨年ようやくヒメマスが持ち出し解禁となりましたが、ブラウントラウト、レイクトラウト、ホンマスなどの大型魚種からは今なお、食品の基準値を超えるセシウムが検出されており、持ち出し解禁には至っておりません」
「いまだ道半ばです。これからも引き続きご支援のほどお願いいたします」