「日本の働き方改革は、どちらかというと残業をなくして休日を増やすとか、在宅勤務を認めるといった話ですよね。そのどれもがスイスでは当たり前のことだし、日本のオフィスもそれに近い環境なので、正直あまりピンとこないです」

 「制度がどうであれ、会社で働く身としては、自分が成果を上げるために必要な環境を整えてもらえることが、一番有り難いです」

 将来を見据えて自分が目標を設定し、堅実に努力している佐藤さんの話を聞いていると、日本の働き方改革の論議が幼く見えてくる。その理由を考えてみると、答えは単純で、働き方を考える「主役」が違うからだ。

 時短やフレックスタイム制、在宅勤務といった制度導入の話は、主役が働く側ではなく、会社になっている。それでは社員にとって働き方ではなく、「働かされ方」に過ぎない。

 だから働き方改革の論議が働く人たちに響かず、他人事になってしまう。それではたとえ会社に新しい制度が導入されたとしても、生産性向上などの効果には結びつかないに違いない。

 続く第2回では、佐藤さんの要望を聞き入れて語学のプログラムを用意し、スイス赴任のチャンスを提供した会社側(フィリップモリス・ジャパン)の、社員の働き方に対する考え方と変革の取り組みを紹介する。