日本人にもよく知られたタイ第2の都市チェンマイは、日中は暑いが朝晩はかなり冷え込む。それを知らずに、現地に着いてから寒い思いをする観光客も少なくないようだ。チェンマイよりもさらに北にあるチェンライも同様だ。タイ北部は、ヒマラヤ山脈の裾野にあたるのである。
タイ北部の山岳地帯ドイトンは「タイのスイス」
チェンライからさらに北に向かうと、ミャンマーとの国境付近に「ドイトン」と呼ばれる標高2000m級の山岳地帯がある。「タイのスイス」と呼ばれることもあるくらい、風光明媚で過ごしやすい土地だ。
ドイトンは、前国王ラーマ9世プミポン国王の母であるシーナカリン王太后の別荘と、山肌に沿って作られた美しい英国式庭園で有名だ。王太后はこの地をいたく気に入り、タイに滞在している間はこの別荘に長く逗留されていたという。現在は王室関係者が滞在する期間以外は一般開放されている。
王太后がなぜドイトンを気に入ったかというと、夫の病死後、のちにラーマ8世とラーマ9世となった2人の王子とともに、スイスのフランス語圏であるローザンヌに移り住んでいたからだ。前国王ラーマ9世プミポン国王は、子供時代の1933年からローザンヌ大学を卒業した1952年まで、約20年間にわたってスイスで過ごしている。「タイのスイス」は、こういった背景から生まれたネーミングである。
そんな高地のドイトンではコーヒーが栽培されている。タイ国内では有名なブランドであり、タイの高級ホテルでもタイ産のコーヒー豆が使用されているようだ。残念ながら、ドイトン・コーヒーは日本では認知度はまだまだ低い。
ドイトンでコーヒーが栽培されるようになったのは、いまから50年ほど前にさかのぼる。そこには、また王室がらみの別の物語がある。