チェンライはゴールデン・トライアングルの入り口
雨期の増水のため洞窟内に閉じ込められたサッカー少年たち13人とコーチが7月2日に発見されてから、10日に全員無事救出されるまで、全世界がこのニュースに釘付けになっていた。タイ北部のチェンライ(Chiang Rai)近郊の国立公園内の出来事である。
チェンライは、よく似た響きのチェンマイほど日本では知られていないが、「ゴールデン・トライアングル」(黄金の三角地帯)のゲートウェイとなる地方都市である。タイとミャンマー、ラオスの3カ国がメコン川上流域で国境を接している地帯であり、麻薬ヘロインの原料となるケシ栽培に適しているため、麻薬密造地帯として悪名の高い土地でもあった。
しかも、タイ北部の山岳地帯には、いわゆる山岳民族(hill tribes)と呼ばれる少数民族が散在している。洞窟から救出されたコーチと少なくとも3人の少年は、タイ北部の山岳民族の出身らしい。タイ北部には国境を越えて密入国してくる人も少なくない。無国籍者も少なからずいるようだ。
さらにチェンライには、メコン川をさらに北にさかのぼった中国の雲南省方面からの流入も多い。この地域の山岳部には、かつて中国国民党軍の残党が居座っていたこともある。中国大陸が中国共産党によって制圧されたあと、雲南省に駐留していたが行き場を失った国民党軍は、越境してビルマ(現在のミャンマー)を経由してタイ北部に落ち着き、1980年代半ばにタイ王国政府に帰順するまで、30年以上も居座っていたのである。現在でも、雲南省方面からの中国人の流入は多い。