10月26日、タイ王国の首都バンコクで、ラーマ9世プミポン・アドゥンヤデート前国王の「火葬の儀」が行われた。在位が70年に及んだプミポン国王が崩御されたのは昨年2016年10月13日。それから黒ずくめの衣装にあふれていた約1年間の服喪期間が続いたが、その最後を締めくくるのが前国王の「国葬」であった。
葬儀のスケジュールは10月25日から29日までの5日間。公休日となった26日の深夜から翌朝にかけて、前国王のご遺体が荼毘(だび)に付された。古代インドの宇宙観で仏教の宇宙観でもある須弥山(しゅみせん)を模し、タイの建築と工芸の粋を極めた火葬塔の建設には工期に1年、経費に日本円で約16億円をかけている。
プミポン前国王はタイ国民から絶大な信頼を受け、敬愛の的であった。その葬儀に際しては、まさにタイ全土が涙に包まれたといっても決して言い過ぎではない。前国王は、文字通り「タイ国民統合のシンボル」であった。
今回は、タイ王国が日本国と同様に「立憲君主制」であるという共通点に焦点を絞り、タイを理解するためのヒントを探ってみたい。異文化であるタイを理解するためには、まずは共通点を確認した上で、相違点を見ていくのが王道というべきだろう。
「立憲君主国」としてのタイ王国
「立憲君主制」とは、憲法で君主の地位と権限を定めている政治形態のことだ。「絶対王政」の反対語である。